2017新型CX-5ディーゼルで一番気になったこと
KULUMA 「日常のクルマ」をイメージする 不定期連載第5回
ファミリアのエンジンを流用した初代ロードスター
かつて、マツダはロードスターという車を開発した。そのとき、車に積まれたエンジンは新開発だったのかというと、そうではない。すでに発売されていたファミリアに使われていたエンジンだった。ターボ4WD版(1985年)は140馬力というラリーを意識したハイパワーだったが、ロードスターにはノンターボFF版110馬力(1986年スポルト16)を採用し、可変吸気システムを外してシリンダーヘッドやピストンを専用のものに代え、ハイオクからレギュラーガソリン使用に変更した1.6リッター水冷直列4気筒DOHC16バルブの120馬力で世に出した(1989年)。
新開発ではない、しかもターボでもないロードスターに乗った人々は「運転が楽しい」と言った。
もしこれがターボ版だったら、そうはならなかった。
自然吸気だから回転数を上げてやっとパワーが出る。かといってスポーツカーのように駿足ではないから、普段の使用でも少しは上げ気味で運転することができる。
2014年に発売されたデミオにも同じような現象が起こった。2011年に搭載されたガソリンエンジンは高圧縮スカイアクティブエンジンだったが、2014年型は高圧縮エンジンではない。高圧縮でなければ、それに伴う排気の形状などが必要なくなり、「普通のエンジン」になった。他の車種(アクセラ、CX-5)のようなスカイアクティブガソリンエンジンと呼べるほどでもないのだ。
しかし、その評判がいい。
回すと楽しいし、信頼性も高い。「どうして楽しいか」は誰も明確に答えられない。新開発でもなし普通のエンジンなのに、どうして楽しいのか。
それは、ロードスターと同じ。パッケージがいいからだ。
車の大きさ、重さ、形といったマテリアルと、エンジンの相性がいい。
初代ロードスターは940kg。デミオは1030kg程度。ライトウェイトだから加速はよく、ブレーキもハンドリングも優れている。そこにパワーを与えすぎなければ、楽しい車になる。踏むだけで楽しい。
試乗ではわからないかもしれない。街中で短い距離を走っても、エコ運転で踏み込まないユーザーにはそこを感じることがないからだ。
デミオも含めスカイアクティブのガソリンエンジンが優れているのは、たとえ踏み込んでもそれほど燃費に差がないこと。燃費の数値に恐れる必要がないのだ。
スカイアクティブはエコカー開発の一貫として内燃機関の燃費向上を目的として開発された。今後も燃費向上を目指して新たな技術を開発し、エンジンで人々を魅了しようとしている。
それは各メーカーに与えられた命題だから、やり続けなくてはならない。
だけども、新開発エンジンに問題が起これば、一気に購買欲はどこかへ去ってしまう。
「信頼性のあるエンジン」は、決して捨ててはならないのだ。
ディーゼルだけしか選べないCX-3のような愚策を繰り返してはならない。
ディーゼルエンジンもあと数年問題なければ、信頼性を再び得ることができる。その後、もしかしたらロータリーエンジンが出て、新型ガソリンエンジンも発表される。そのときに今のディーゼルとガソリンをないがしろにしてはいけない。
【CX-5の360°動画はこちら https://youtu.be/8heXj5PiY2k】
マツダのデザイン思想は国内他社と圧倒的な違いを見せ、それが熟成の域に到達しようとしている。だから、新開発エンジンじゃなくても、いい車だと感じる人はきっといるはずだ。